園児世代の基本検査-ご質問から-

視能訓練士の平良です。先日、個人あてにご質問をいただきました。

Q 新卒2年目視能訓練士一人職場です。初歩的な質問で申し訳ありません。「弱視や斜視に思いあたることは無いが、子どもがきちんと見えているか眼科健診に来ました!」という3~4歳来院の場合、何の検査をすれば良いか実はよくわからないまま対応しています。当院は白内障手術と一般眼科なので子どもはいつも少なく、経験不足のため、こうした場合にどんな検査を基本項目としたら良いのでしょうか。ご経験豊かな平良様に質問するのは失礼と思いつつ、良かったらご教示ください。(関東地方Tさん)

Tさんへ。失礼だなんてとんでもないです。それぞれ置かれた環境が違いますしお気持ちお立場よくわかります。このように率直なご質問とても嬉しいです。お互い頑張りましょうね♪

以下、私なりのお答えですがご参考になりますでしょうか。

【3.4歳児の眼科健診】

私たちも微力ながら「子どもは見えにくさを訴えない。なにも無くても見えかたチェックに眼科受診しましょうね」と啓発活動しています。

気になる点は無いけど見え方チェックに来ました~

という来院が増えたら、とても素晴らしいことだと私は思います。

3歳4歳は、3歳児健診の次の就学前健診(6歳)まであまり眼科健診の機会がない期間です。両眼視機能完成までの大切な期間であり、近年増加している近視の割合も気になる世代でもあり。小学校入学までしっかり見届けてあげたい想いが真っ先に浮かぶという位置にあります。

さて眼科施設によって備えられている検査機器やツールはまちまちです。たとえ限られた環境であっても最低限やれる事をやろう!が私の持論です。

基本的検査項目とポイント

このあたりを踏まえたうえで、基本的な検査項目としては…

✅屈折検査

(ちょっとポイント)

⇒据え置き型レフで測定するときに各眼の固視状態、器械で出る数値の変動やその変動幅を把握しよう!その様子で視力検査眼の優先度(※どっちの眼から検査するか)も参考になります

⇒SVS スポットビジョンスクリーナーがあればレフとの併用も◎。測定値の変動が大きくないかチェック。SVS測定時のふとした頭位もよく観察したいところ。

✅視力検査

(ちょっとポイント)

遠見/近見どちらもお忘れなく。子どもの様子によっては4歳でも絵指標を使ったり…最初は両眼で測る…左右どちらから測るか順番を考えることも。

例/初めての視力検査であれば視力が出にくいと予測される右眼から測るよりもあえて左眼から測り、検査全体がスムーズにいくよう配慮する

⇒乳幼児期の視力検査は「どうやって楽しんでやってもらうか」が一番大事!検査結果や治療、以降の受診にも大きく反映することを頭に入れよう!

✅眼位検査

(ちょっとポイント)

⇒ここでの対象者は3~4歳のお子さんなのでできるだけ正確かつ素早く検査したいところ!

事前準備がカギに!?

⇒固視目標のところに保護者に立ってもらい、声掛け・指差してもらったり音の出るもので興味を引いてもらったりなどでスムーズにきることが多いです。

✅立体視検査

(ちょっとポイント)

⇒検査の仕方をどう理解させるかがとても大切。(※3,4歳で初めて検査にのぞむ子にとって立体視検査は理解が難しい!)フライテストなら羽を掴む仕草をやってみせてから真似させる。

⇒出来ないときはワンクッション(※他の検査に切り替えるなど)入れて再度トライ。

必ず正面から相対して検査中の眼位を観察。

一番お願いしたいコト

対応をお願いしたい基本検査項目は上記に挙げた4つですが、実は一番お伝えしたいのは、

何も問題ありません

で終わらせないで欲しいという点です。

今後の定期チェックを意識させる説明が大切だと考えます。

前提!もし僅かでも結果が疑わしいと感じたら

⇒その日の検査で完結させない。翌週翌月などに必ず再受診してもらう。

もし何も問題がなかったら

  • 両眼視機能の発達は6~8歳で完成されること。
  • 遠見/近見二つの視力はどちらも特に小学校入学以降、学習/遊び/スポーツすべてに重要であること。
  • 今日確認できたのは、今の時点で問題がないということ。
  • 子どもの見えかたは変化しやすく、いま獲得している両眼視機能もまだ脆弱
  • 毎年順調に育っているか見守りたいので来年も受診が望ましい。見届けるための大切な検査データが取れた。来年もしっかりデータを積み重ねましょう。

小児の眼科検査は【いかに繰り返し診ていくか】が最重要というのが私の経験則です。特に眼科クリニックは末永い伴走者。その子の言葉や挙動も含め発達具合を継続的に観察していく存在であって欲しいなと願っています。

さて初診の問診内容充実も、実はお伝えしたいところです。この件は別途このブログでお伝えしたいと思います。

平良美津子PROFILE

北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、1年間トラックドライバー。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児はのべ7万以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。

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