ロービジョンケア忘れられない出逢い 本田孝文さん

SPECIALゲストコラム、今回は九州山口一円で活躍されているメガネのヨネザワ福祉機器部門課長/本田孝文さんに執筆いただきました。

皆様はじめまして、メガネのヨネザワの本田と申します。

当社は九州山口に展開する眼鏡チェーン店で、その中で私は視覚障害者の福祉機器担当をしております。

今回は弊社のロービジョンケアに対する取り組みや私の思い、今後私が取り組んでいきたいことについて書かせていただきました。

ロービジョンケア

皆様ご存知とは思いますが

ロービジョンケアについてごく簡単に説明すると、

『疾患や受傷で見えにくい状態になった方へ、医療的支援や機器、生活上の訓練、福祉制度を利用して生活の質(QOL)を向上させる支援』

のことで、視覚障害のリハビリ とも言われます。

また最近は広義の意味で「見えにくい」だけではなく「見えない」方への支援も含むことがあります。

視覚障害は情報障害移動障害とも言われます。

その困難さに対処するための福祉機器として

見えにくい方が見えやすくする為の機器(拡大読書器やルーペ・遮光眼鏡など)

見えない方は聴覚や触覚など他の感覚に置き換え情報を得るための機器(音声時計やパソコン画面音声化ソフトなど)

安全な移動を補助するための機器(視覚障害者安全つえ=白杖)

などがあり、これらを患者様の困り事・やりたい事に合わせて提案するのが我々の仕事です。

個人競技でなく団体戦

ただ、最初に述べた通りロービジョンケアは単に医療的な診断や機器の提案だけではなく、他のさまざまな分野にまたがってサポートが必要です。

学生であれば就学、成人であれば就労生活保障

また日常生活や移動の訓練行政福祉、場合によってはメンタルのサポートも必要です。

なので、我々も単に機器の紹介・提供を行うだけでなく他の専門職に繋ぐことを重要視し、眼科医や視能訓練士も含めた専門職の先生方との連携を大切にしています。

「ロービジョンケアは個人競技ではなく団体戦」とよく言われており、ここが我々とみるみるプロジェクト様は大変共感する部分です。

忘れられない出逢い

眼鏡業界に入り約30年、その中で約20年前からロービジョンケアに本格的に取り組み始めましたが、それにはいくつかのきっかけがありました。

ロービジョン担当を始めてまだ間もない頃の話です。

ある日、鍼灸師を目指し勉強中の若い弱視男性から

「今使っているルーペが見えにくくなったから新しいものを見せてほしい」

との連絡が入りました。体調が悪く入院中なので病院へ来てほしい、とのこと。

そして訪問してみると、そこは緩和ケア病棟でした。

彼が亡くなった後に知ったのですが、その時点で脳に腫瘍があり既に手術ができない状態だったそうで、おそらく視力の低下はその影響もあったかもしれません。

それでも彼は「入院中に鍼灸の教科書を勉強したい」「なんとかもっとよく見えるものを」という期待をもって私を呼んでくれました。

ところがまだ未熟だった私は、そんな状態でそれでも「見たい・読みたい」という強烈な願いに応えてあげることができなかった、本当に悔しかったです。

年月が経ち、当時より少しは知識も経験も増えました。

今なら当時の彼にもっと良い方法や手段が提案できるのかもしれません。

新しい機器が出るたびに

「彼がこれを使えば見えただろうか?」

「この機器をあの時彼に見せてあげられたら?」

という気持ちは常に私の根底にあり、ロービジョンの患者さんとお会いする度に残念な思いをしてほしくない、少しでも困り事を解決して帰ってほしい。

その為に私も常に研鑽していたい、という想いが私の原動力の一つです。

恩師との出逢い

もう一つは恩師と呼ぶべき方々との出会い。

まず一人は

元・大島眼科病院検査部長で視能訓練士の

山田敏夫先生

ロービジョンに留まらず検影法の第一人者としても有名な方です。

約20年前に先生の勉強会に参加させていただいて以降、たくさんの教えをいただきました。

よく「医療とは病を治すのではなく患者を治す」と言われますが、山田先生を見ていると本当にそれを強く感じます。

どんなご高齢でも、逆に小さなお子様に対しても患者様の人格を尊重し必ず名前に「さん」付でお呼びし、敬語で話しタメ口は絶対に使いません。

もちろん検影法含めて技術も素晴らしく、そしてそんな山田先生の想いは後進の視能訓練士に引き継がれ、今もその先生方とはよくご一緒にお仕事をさせていただいています。

もう一人は

広島大学・特別支援教育学講座の

氏間和仁准教授

私と同じ年齢ですが、専門の視覚障害児教育以外の分野まで知識が広く「世の中にはこんなに博識の人がいるのか」といつも驚かされます。

彼がよく言うのは、

弱視だからとなぜ他の子どもより余計な苦労・努力を強いられねばならないのか、と。

また「スキルバリアがあってはならない」という言い方も彼はよくします。

本当にその通りで、医療や教育のサポート、眼鏡を含めた適切な支援機器を使うことで障壁を取り除き、どんな子ども達も同じスタートライン平等な学びの機会を得てほしい、と願います。

そして、そんな先生と同じ考え方の教員が少しでも増えるお手伝いができたらと、

私も年に一度広島大学の特別支援教育学講座で視覚支援機器の講義をさせてもらっています。

本田さんのブログ次回に続きます!


本田孝文PROFILE

北九州市出身、福岡市在住、52歳。1997年(株)ヨネザワ入社、2004年より福祉機器担当としてロービジョンケアに携わる。現在、福祉機器部門課長として九州山口の店舗と視覚障害者のサポート業務にあたる。
【資格・学会など】2010年SSS級認定眼鏡士取得→2023年より1級眼鏡作製技能士へ移行。日本ロービジョン学会/視覚障害リハビリテーション協会/広島大学客員准教授

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