私が最初に海外の学会に参加したのは、
1986年ローマで開催された第25回国際眼科学会が最初だったと記憶しています。
虎の門病院の勤務から大学の助手になったばかりの31歳の頃で、研修医に毛が生えた程度の年代でしたから、海外出張に行くチャンスをもらえるのは非常に幸運なことでした。
虎の門病院勤務の時代に遭遇した珍しい症例の報告を国際眼科学会に応募した所、ポスター展示に採用されていたのでした。
虎の門病院から出身大学の附属病院に転籍したばかりではありましたが、
演題が国際眼科学会に採用されたのなら仕方ない。( 参加される当時の教授の )鞄持ちを兼ねて出張してきなさい。
ということで、医局長の許可をいただく事ができたのです。
教授のお供ですので、偉い先生同士のご挨拶の場面に何度も遭遇する機会がありました。
海外の著名なドクターであっても、専門外であると知らない方がほとんどなのですが、私のようなかけ出しの医者でも日本から参加された著名な教授のお名前はわかります。
その中でも強く印象に残ったのが、1973年から1990年まで慶應大学医学部眼科学教室四代目教授としてご活躍されておられた植村恭夫先生でした。
ORTの皆さんにも、小児眼科分野の第一人者として、あるいは視能訓練士法(昭和46年制定)の成立や、国立小児病院附属視能訓練学院の設立を主導した先生としての関係が深い先生です。
たまたま、会場から移動するバスの中で私がお供させていただいた教授が、同門の先輩教授である植村教授にご挨拶されていました。
私は植村教授の近くの座席だったので、そのお話ぶりや姿を見かけただけなのですが、とても強く印象が残っています。何とも言えぬオーラと威厳をお持ちでありながら、ハキハキと気さくに明るくお話しされる先生だったので、強く記憶に残ったのでした。
その後、植村教授と直接お話しするような機会は無かったのですが、慶應大学の教室出身の先生とお話しする時に、
「植村教授とはローマの国際学会でお話ししたことがありまして。。。」
と会話を始めると、皆さん「ほー、植村教授と!」と親近感を感じていただけるので、暫くの間、このエピソードを常套句のように使わせていただいていました。
何故このような出来事を紹介するのかと言えば、国内での学会に比べて、海外の学会の方が著名な先生とお話しできるチャンスが多いなぁと感じているからです。
不思議な事ですが、日本を離れた地で出会う方とは、出身大学の違いや年齢、キャリア、専門といったドクター同士の垣根をヒョイと飛び越えてご縁ができることがあります。
しかも、そこで出来たご縁は、互いに強く印象に残るもののようで、帰国したあとも不思議な連帯感として残るような気がします。また、その様なご縁が、更なるご縁につながり、連鎖していくものだなぁと実感しています。
私は大学での研究の道を選ばず( と言うか大嫌いだったので放り出して笑)、ひたすら白内障手術の臨床家としての道を突き進んできた訳ですが、そんな私が大学や病院と離れて開業しても、沢山の先生方との交流を持てて、ある程度のレベルを維持し続けることができたのは、海外学会での人脈が根っこや幹になっているのだと思っています。
海外学会への参加の魅力は、すでに述べた人脈作りにもありますが、他にも日本での学会との規模の大きさの違いを実感できたり、日本では未承認の機械や技術に間近に触れることができたりと言うことは大きなポイントです。
また、開催地の観光の魅力も忘れてはなりません。
この国際眼科学会への初参加で、味をしめ、虜になった私はその後も、独立してクリニックを開業しても毎年のように海外学会への出張を続けるようになりました。
旅先でのエピソードや国際学会の魅力については、本稿の続きとしてご紹介しようと思っています。
2023.5.5
3年ぶりにASCRSにリアル参加するサンディエゴの地で記す
近藤義之PROFILE
1955年東京都生まれ。日本眼科学会認定眼科専門医/一般社団法人みるみるプロジェクト特別顧問/医療法人社団インフィニティメディカル前理事長。杏林大学卒業。虎の門病院眼科勤務を経て1993年八王子市で眼科診療所を開設。組織を拡大し医療法人インフィニティメディカルの下に4か所の診療所を経営していたが2020年に医療法人経営を後進に委譲して退職。日帰り白内障手術2万件以上の豊富な経験を持ちリタイア後もフリーランスの眼外科医を継続。毎月100例以上の白内障手術を執刀し続けている。趣味は眼科手術の研究と65歳から始めた乗馬。
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