先生、ご飯食べてないの?~メンタルコンディションを考える~

みるみるプロジェクト平良美津子 です。

臨床で長く働いて、あらためて感じることが。

患者様に良い医療を提供するには

まず私たち自身の“心のコンディション”を整えることが大切

という事です。

視能訓練士の仕事は、ただ検査するだけではないですよね。患者さんの不安を受け止めたり、小さな変化に気づいたり、ときに励ましたり。

特に小児眼科は、子どもたちに受け入れてもらいながら一緒に検査訓練を歩む「伴走」のお仕事だなぁと考えています。

私たちの心の状態(メンタルコンディション)は、思っている以上に患者様へ伝わっています。

もちろん人間ですから、毎日同じコンディションでいられるわけではありません。

患者様とのやり取りの中で、落ち込むこともあります。思うようにコミュニケーションが取れなかったり、厳しい言葉を受けたり、自分の未熟さを感じ沈みがちな日も。プライベートだって悩みが全くない人はいないでしょう。

ですが、その気持ちを引きずったまま次の患者様に接するわけにはいきません。

一人の患者様との出来事を、次の患者様へ持ち込まない。

気持ちを切り替えて、できるだけフラットな状態で向き合う。

その積み重ねが、医療者としての安定感につながるのだと思います。

ただそれは簡単なことではありませんよね。

コンディションは影響する

特に眼科や眼鏡店などの職場は、比較的小規模が多く、少人数で日々の業務を回している環境です。

そのため、一人のメンタルコンディションが職場全体に与える影響は想像以上に大きいものです。

誰かがピリピリしている。イライラする⇒空気が張りつめる。

逆に、安心感のある人がいると、自然と周囲も落ち着く。

特に先輩/上司といった立場の人の言動やメンタルコンディションは、チーム全体の雰囲気や働きやすさに直結するのだと感じます。

先生、ご飯食べてないの?

子どもたちは…本当に感性が鋭いですね。

以前、5歳女の子を担当した時のこと。

その日は、私自身、少し悲しいことがあり、気分が沈んでいました。

もちろん仕事ですから、普段通りに振る舞っていたつもりでした。

ですが、その女の子がふと私を見上げて、

「先生、元気ないね。ご飯食べてないの?」

と声をかけてくれたのです。

驚きました。

“空気”や“感情”を、こんなに敏感に感じ取っているものなんだ。

同時に「ご飯食べてないの?」という表現が、なんとも微笑ましくて、思わず心が和らぎました。

その患児は2歳頃からずっと検査を担当してきた子。

小さかったあの子が、こんなふうに相手の感情を感じ取り、豊かな自分の言葉で表現するんだ。その成長にも感動しました。

同時に、「私は今日、この子にベストコンディションで向き合えていなかった」と恥ずかしい気持ちにも。

私にとって、複雑に心が揺さぶられる、とても忘れられない経験です。

医療の一員として、常に完璧でいることは難しい。

けれど、自身の状態を把握して整えようとする姿勢は、とても大切なのではないでしょうか。

心に余裕がある時は、患者様にも自然と優しくなれます。周囲への言葉も柔らかく、チームの空気も穏やかになります。

逆に、自分自身が良くない状態のままでは、頑張ろうとしても、どこか無理が出てしまいます。

だから私は、メンタルコンディショニングを学ぶことには大きな意味があると感じています。

それは単なる「ストレス対策」ではなく、自分らしく長く働き続けるための土台づくり。

周囲へ患者様へ社会へ、より良い医療を届けるための準備でもあると思うのです。

他領域から学ぶ機会に

今回の第27回みるみるセミナーは、私自身、とても楽しみにしています。

これまでのみるみるセミナーは、眼科学や眼鏡といった“眼の専門領域”がテーマでした。

今回初めて、他領域の専門家をお招きしてのセミナーとなります。

普段学んでいる眼科領域から少し離れ、「他領域の専門家は、何を見て何を考えているのか」も知ることができる、とても貴重な機会だと感じています。

スポーツメンタルという世界には、プレッシャーの中で力を発揮する方法や、自分自身の状態を整える考え方など、私たち医療従事者にも通じるヒントがたくさんあるのではないでしょうか。

私自身、まだまだ勉強中です。

それでも、「自分を整えること」を大切にできる視能訓練士が増えたら、もっと働きやすい職場が増え、患者様にも安心感のある医療が広がっていくのではないかと感じています。

ぜひ皆さんと一緒に学べたら嬉しいです。

四方よしのなかで

みるみるプロジェクト鈴木代表がよく提案する「四方よしの視能訓練士」モデル。

自分自身。
チーム/職場(クリニック)。
患者様。
そして社会。

その四方すべてにとって良い状態を目指す理想像、という考え方。

私はこの考え方がとても好きです。

自分自身が安定していることで、周囲に優しくなれる。

チームの空気が良くなる。患者様に安心感を与えられる。

そして、その積み重ねが地域や社会にとって良い医療につながっていく。

逆に言えば、メンタルコンディションを整えることは、自分自身のため。

無理をし続けて、自分を犠牲にしてしまうことは、必ずしも良い医療にはつながらない。

だからこそ、「自分を大切にする」という視点は、とても大切なのではないかと思います。

(自分を大切にする、は全て私の原点かも知れません。このお話はまたの機会に)

平良美津子PROFILE

北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、1年間トラックドライバー。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児のべ7万以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。後進CO育成の他、「外に出るCO」の実践として異業種連携(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/園内視力スクリーニング検査事業に取り組む。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。

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