こんにちは、みるみるプロジェクト視能訓練士の平良です。
弱視や斜視と診断されこれから治療訓練に取り組む保護者様に、今日はメガネのプロの技術が重要な理由についてお話ししたいと思います。
▷治療には眼鏡が必要
子どもの弱視や斜視の治療には、治療用眼鏡が必要です。わたしの経験する限り、必要がないというケースはほとんどありません。弱視はもちろんのこと、斜視においても手術するまでの期間、治療用眼鏡でしっかりものを見るということが大切です。※注/眼科医の判断による
この【必要】ということをしっかりを受け入れていただき、お子様にかけてもらおう!という前向きに取り組んでいくお気持ちになってくださること。これが保護者様に最初にお願いしたいポイントです。
この部分、サラッと言ってしまいがちですが実際、保護者様には様々なお気持ちが去来するようです。
「え?どうしてこんな小さな子に眼鏡を?」
「信じられない…どうして!?」
「何とかかけなくても済む方法は無いのでしょうか。ネットで調べたらよい方法があるのでは」
「小学校に上がってから眼鏡かければ良いよね…」
治療用眼鏡が【必要】と受け入れられるまで、本当に様々な保護者様の反応を経験してまいりました。
眼科医の指示のもと、保護者様にご理解いただけるまで複数回お話ししたりその後受診のない方にお電話したりすることも。お気持ちお察ししつつも、ここはスタートラインに立っていただけるよう私たちも力を尽くしたい最初のポイントです。
▷メガネのプロは治療に欠かせない
弱視斜視に【必要な】治療用眼鏡。
この治療用眼鏡を担当するメガネ店プロの技術は、良好な治療訓練を行っていくうえで絶対に欠かせないものです。
これは理念や理想ではなく、私の経験からも強くお伝えしています。
たとえば、100円SHOPでも老眼鏡(メガネの一つ)が売られていますし、5千円とか9千円といういわゆる格安なメガネもすっかりポピュラーな存在となりました。いったいどんな眼鏡が大切で、どんな技術が求められるのでしょうか。
今回は、メガネというモノでなく、そこに従事するプロの技術面についてお話しします。
▷かけてくれるかどうか、からすでに頼れる存在
弱視斜視はとにかく早期発見早期治療が大切です。つまり1歳でも3歳でも当然、発見と治療開始はあり得ます。
現在、3歳児健康診査やそれ以前での弱視斜視疑いの発見が増えており、治療開始の平均年齢が下がってきているように感じています。とても素晴らしいことですね。
しかし2歳や3歳で特に多いのは「眼鏡をなかなかかけてくれない」というご苦労が最初に立ちはだかるケースです。いろんなお子様がいるので中には「眼鏡大好き!」と初日から喜んでかけてくれるケースもあるのですがむしろ少数派かもしれません。
もともとお子様の多くは顔を触られたりすることが苦手だったりします。それがある日突然、眼鏡というものがお顔に乗ってくるのですから嫌がるのも無理はないです。
ここで保護者様、決して落ち込まずに取り組みましょうね。
私の知っているメガネ店プロの方々は、最初に眼鏡装用を嫌がらず少しでもお子様の心のハードルを下げるために様々な工夫をしています。
眼鏡にトライするお子様をお店全体で褒めて喜んだり。注文から完成までの期間、自宅で出来る保護者様の工夫について教えてくれたり。いきなり眼鏡装用せず、お子様と触れ合いながら徐々に心を許してもらえるよう距離を縮めるスキルに長けていたり。
このお子様の心のハードルを低くする技術(人柄/知識/経験によるところが大きい)も、メガネ専門店ならではの永年のスキルの賜物だなぁと感じています。
保護者様だけで抱え込まず、メガネ店も一緒にかけてもらう工夫に取り組んでいくわけです。視能訓練士としてとても頼りに思っています。
▷“気持ち良さ”はフィッティング技術
フィッティングとは、眼鏡フレームを調整しながらお顔に合わせてフィットさせることを指します。人の顔は皆さん、左右完全な対称ではなく、耳の高さ/鼻の高さ/眼の位置など全てに個性があり違いがあります。
ましてやお顔が成長途上にあるお子様…しかも東アジア特有のお鼻が大人に比べてとても低いという特徴はどのお子様にも共通しており、こうしたお顔にしっかりとフィッティング出来る技術は実はとても難しい技術です。
率直に経験をお話しすると、定期的に来院するお子様のメガネを見ていて「あー、フィッティングが良くないなぁ」というケースはとても増えています。
その大半は残念ながら格安プライス店で購入されたものです。
フィッティング技術には、長年に渡る経験がとても重要といいます。もちろんただ長いだけでなくこどもに特化した独特の知識や注意点の習得が大切。大人と子どもとはそれほどお顔の特性が違うともいえます。
中には「この子がここの店長さんのフィッティングでないと嫌がってしまって」と指名されるケースも珍しくありません。
お子様は自身の気持ちが言えない/はっきりわからないことも多いです。どういうわけか嫌がり続けることも。
でも、しっかりフィッティングされて気持ち良いとニッコリと笑顔をみせてかけ始めたり。
これほどフィッティング技術って大切なんだなと驚きです。
※なお、フィッティングが重要な理由は眼鏡レンズの正しい光学的保持という点もあります。これについてはまた別の機会にお話ししますね。
▷「治療チームの一員」
わたしたちが、こどもめがねに本気で取り組むメガネ専門店=治療チームの一員、と位置付けている理由の一端についてお話ししました。
わたしは眼科に従事している以上、患児にはもれなく治療が力強く前進されることを強く願っています。
それには、治療用眼鏡を担当するメガネ専門店のプロフェッショナルな技術が本当に大切なのです。
このプロフェッショナルの技術も、この15年で徐々に失われつつあるといいます。理由は、格安プライス店の台頭によりメガネ専門店の店舗数自体が徐々に減少、そこに従事するプロの総数も減りつつあるためです。
こどもめがねで永らく培われてきた技術やマインドを、どうやってこれからの子どもたちにも提供し続けてもらったら良いでしょうか。
その方法の一つが、みるみるSHOPです。
みるみるSHOPには、私たち眼科側の知識やマインドをお伝えしつつ、こどもめがね専門店で培ったスキル技術を共有していただいています。
どのお店も、子どもたちの豊かな成長に貢献したい、こどもめがねに関わることが「喜び」と言ってくださる温かく真摯なマインドをもった方々です。わたしも訪問するたびにあらためて学ぶものが多く、頼りにしています。
これまで眼科医療機関のみであったみるみる手帳提供を、みるみるSHOPにもお願いしたのは、こうした信頼の背景があります。
保護者の皆さまには、メガネ専門店は買いに行くところというより「相談しに行く」「一緒に取り組んでもらう」伴走者だとご理解いただけたらと思います。
平良美津子 PROFILE
北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、1年間トラックドライバー経験。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、有志らと一般社団法人設立。現在複数の眼科クリニックで勤務。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動にも積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
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