こんにちは、視能訓練士の平良です。
今回ちょっと専門的なお話になってしまうかも知れません、ごめんなさい!
第9回日本小児診療多職種研究会と必要な連携についてお話しします。
北九州発祥の研究会
日本小児診療多職種研究会をご存じでしょうか。
小児診療に関わる医師/看護師/療法士/保育士/教師/保護者などまさに多職種が集まった研究会です。
第9回研究会に参加しました。(2023年2月11日/12日,大阪公立大学杉本キャンパス)
小児科医の倉重弘先生(北九州市,倉重こどもクリニック院長)や故 市川光太郎先生(北九州市立八幡病院小児科)が呼びかけ設立されました。
わたしの故郷北九州市が発祥ということで、先生方のご尽力に感銘しています。
倉重先生はこどもの眼についても熱心に取り組まれていらっしゃる小児科医のお一人です。
弱視の早期発見に威力を発揮するスポットビジョンスクリーナー(SVS)を早くから導入され、弱視が疑われる多くのお子様を大里眼科クリニックに紹介してこられました。
(関連記事)3歳児健診とSVSスポットビジョンスクリーナー (視能訓練士平良のみるみる日記)
子どもの観察には…
眼科外来では多くの子どもたちと出会います。
その多くは何年もの期間をかけ検査や訓練でお会いするわけですが、発達いちじるしい時期、外来で会うたびにその変化や成長に驚かされます。
同時に、「子どもの発達ってなんだろう」「眼科以外ではどんなことに注目しているのだろう」と興味をもつようになりました。
また師匠辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶうち、
❝検査スキルは大切だけれど、その前にもっとその子を観察すべき❞
であることに気づきました。
眼科で観察対象が眼ばかりになりそうですが、眼=心、眼=脳、眼=発達です。
そもそも子どもたちに両眼視機能を獲得してもらいたい理由は、大切な発達時期にキレイなものを見て欲しい、ベストな見えかたで学んで豊かに成長して欲しいからです。
小児科は?保育士さんは?子どもの発達や成長をどう捉えているのだろう、ぜひ学びたいと思うようになりました。
何年も前になりますが第1回研究会は北九州市開催でした。倉重先生から直々にお声かけいただき大里眼科として演題発表して以来、可能な限り参加しています。
ポスター発表
今回、みるみるプロジェクトとして初めて演題発表しました。
多職種といえば、みるみる手帳で最初に着目した眼鏡店/メガネメーカーも治療チーム、という考え方もみるみる連携の大切な原点です。
演題タイトル みるみる手帳を介した弱視の早期発見/治療の異業種連携について
おかげ様で共同発表者(共同著者)の皆さまからのお力添えをいただき、無事発表できました。
理学療法士、作業療法士、保育士、小児科医などふだんそれほど深く繋がる機会が少なかった方々が聴いてくださって、終了後質問してくださったり、みるみる手帳見本を持って帰ってくださった方も。
皆さん口々に「お互いの専門領域をもっと教えあって連携すべきですね」とおっしゃっていました。
みるみるプロジェクトが掲げる理想モデルは、
全ての子どもに見えかたチェック→疑わしいものはもれなく眼科受診→治療訓練の途切れないループ…というステップが前提です。
みるみる手帳は眼科受診後から活用されますが、この前提となるステップもとっても重要。
全ての子どもがもれなく見えかたチェック…しかもほぼ毎年が理想…となると多職種連携は必須ですよね。
凄い!小児科の活躍
子どもの眼についてとてもお詳しい小児科クリニックもあります。
間歇性外斜視の有無までチェックしている小児科の発表もありました。
凄い!とてもよく勉強されていて、しかも実践しているご様子に感銘しました。
過去発表では、眼科医や視能訓練士が行う検査器具(スキアなど)まで使いこなしている小児科などもあり、参加するたび本当に驚きます。
SVSは近年小児科クリニックでも導入が進んでおり、北九州市ではかなりの台数が配備されています。
とにかく一人でも多くの子どもをスクリーニング検査することが大切ですので、小児科医の先生方の意欲的な姿勢には感謝です。
医療専門職の連携
看護師(Ns)、理学療法士(PT)作業療法士(OT)言語聴覚士(ST)の存在も目立ちました。
子どもたちの発達を見守り育てる医療専門職として、他職種との連携を活発に行っている様子にいつもながら感銘します。
小児難聴/聴覚情報処理障害/吃音/自閉症スペクトラム/運動発達…
ここでは書ききれないほど こどもの発達には多様な特性や困難があって、それぞれの専門性を活かしつつどう一人の子どもに支援できるか真摯に向き合っていて多くを学ばせていただいています。
視能訓練士もこれら医療専門職の一つですが、お恥ずかしながらまだまだ関わりが足りてなかったなぁとわたし自身痛感しました。
教育職の連携
教育関係者の方々の参加も目立ちました。保育園幼稚園,小中学校,教育委員会…
子どもと接する機会が最も多いのは何といっても教育職です。
実はわたし自身も以前、とある患児の支援学級受け入れで小学校の先生と連携したことがあり、たいへん熱心に動いてくださり感謝しています。
教育講演ではeスポーツを中学校教育に積極的に取り入れている先生のお話も。
学力テストでは測定できない「非認知能力」を含む資質/能力を育む学びの場をつくるという取り組みで、大変興味深いものでした。
余談になりますが、ポスター発表ではもう一つ、神崎保孝先生(臨床心理士)らと共同でeスポーツ関連の発表をさせていただきました。
演題タイトル「臨床Gamification による知的および認知諸機能への開発的効果」
神崎 保孝¹ ³、鈴木 達朗² ³、平良 美津子² ³、松井 崇⁴ ³、磯貝 浩久⁵ ³
1 東京大学大学院医学系研究科,福岡県教育委員会、2 一般社団法人みるみるプロジェクト
3 福岡e スポーツリサーチコンソーシアム、4 筑波大学体育系、5 九州産業大学人間科学部
豊かな発達のために
多くの そして一人一人のこどもの豊かな発達を守り育てるには
このように多方面多職種が連携しあうことが重要だなとあらためて学ぶ機会となりました。
今後はこの研究会にもっと眼の分野の方々(眼科医/視能訓練士/眼鏡店/眼鏡メーカー)が多く参加するようになると良いなぁと思っています。
来年は東京で開催だそうです!
ささやかながら私たちも、保育園幼稚園での講演やスクリーニング検査支援などを始めています。
眼科で培った専門知識は他職種にお伝えし、逆に知らないことは学ばせていただく相互連携を深めていきたいと思います。
平良美津子PROFILE
北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、1年間トラックドライバー。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児はのべ7万以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
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