こんにちは、視能訓練士の平良です。

今回は、近年とても広く知られるようになった子どもの近視問題についてお話しします。もし、お子さんが「近視です」と初めて診断されたら。保護者として最初に理解したいコト、考えておきたいことなどについてお伝え出来たらと思います。
近視は…
近視は眼の屈折異常の一つ。日本など東アジアでは特に、最も多くを占める屈折異常です。要するに珍しいものでなく、保護者世代にも近視は高い割合でいらっしゃると思います。
見えかたとしては、

(裸眼状態で)遠くの視力(遠見視力)が低く、近くの視力(近見視力)がそこそこ良い
と表現できると思います。


「近く」といってもどのくらいの距離でピントが合っている近視なのか、それは程度によります。1m程度でピントが合うという軽い近視もありますし、わずか5㎝先にピントが合っているという強い近視も。
つまりどの程度の近視なのかは人それぞれです。
近視のみならず遠視/乱視など屈折異常全般で言えることですが、屈折異常の程度は、実は長い人生の中で変化します。特に子どもは生まれてから眼の発達/成長が続きます。精密な両眼視機能は6~8歳までに完成しますが、その後も20歳ぐらいまでは屈折異常が特に大きく変化しやすいといえます。


ただ前述のとおり、20歳以降も屈折は変化します。
余談ですが私が育った昭和の時代、近視の人は現代ほど多くなかったかも。遠くが見えにくい近視を「目が悪い」と表現するのは、当時近視が少数派だったからかも知れませんね。



遠くがくっきり良く見えるのが当たり前
という感覚の名残が感じられます。
注)眼科関係者は裸眼視力が低いだけで「目が悪い」とは表現しません
2020年から数年間続いた行動制限のなかで、屋内活動が増えた結果世界的に近視が増えているとのニュースが頻繁に取り上げられています。直近の「視力1.0未満の子ども」調査でも年々遠方視力不良は増えており、この大半は近視だろうと思われます。


近視と診断されたときの反応
「近視」という診断は眼科医療機関で医師によって行われます。私たち視能訓練士はその判断材料としての検査を担当するわけです。
さて、「近視」と診断されたときの保護者の反応は眼科外来でも様々です。
最近は自身も近視だよという方が多いので驚かれることはずいぶん減りましたが、それでも



親の私は眼が良いのになぜ!



眼が良い子に産んであげれば良かった
と悲劇的に受け止めてしまう保護者もまだいらっしゃいます。
私はこういうとき



眼が良い悪いではなく、標準より身長が高い低いという表現に近いんですよ。それより過ごしやすい環境を整えてあげましょう。
と説明しています。
強すぎる近視は要注意
全ての近視が悪いと思っている眼科医はほとんどいないと思います。
近視は近くにピントが合っている状態の眼。
近くのものを見る機会が多い現代人の進化だとおっしゃる先生も少なくありません。




これも余談ですが、私自身の眼もじつはここ数年で軽度の遠視⇒軽度の近視に変化しました。こんな年齢でも屈折が変化するんだなぁと身をもって実感しています。
ただ、注意いただきたいのは「強すぎる近視に進行するのは確かに良くないよね」と指摘されている点です。
近視の原因と指摘されているのは主に2つ。遺伝要因と環境要因(生活習慣やスタイル)です。
遺伝は、両親あるいは片親が近視の場合、子どもは近視の発生率が高いことが報告されています。
環境要因は、まさにどう過ごしたかという環境そのものが近視の原因になっているということです。
最初に理解したいコト
いま様々な情報が飛び交い、混乱したり結局よく分からないよねと興味関心が無くなってしまったりする時代です。
子どもの近視についても同じような部分があり、保護者の声もさまざま。



6歳で近視!なぜですか?ヤバい。治療法はないんですか?!



親の私も近視だし。眼科に来るほどの事じゃないですよね
最初にご理解いただきたいコトをお伝えします。
- 子どもの近視は変化(進行)することが多い。大人になるまでの期間、その時点で、どの程度の近視なのか。定期的にしっかり検査で状態を把握すること。これが第一。
- 子どもの正確な屈折検査は眼科でしかできない。
- 豊かな成長のために、いまベストな見えかたが確保されているか?を気にして欲しい。メガネ、コンタクトレンズetcはそのためのツール。
治療法は?対策は?と先に進む前に。
「近視なんてみんな同じ」ともならずに。
成長過程で身長や体重を測っていきますよね。これと同じようにまずは定期的な把握を大切にしてくださいね。
平良美津子PROFILE


北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、1年間トラックドライバー経験。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、有志らと一般社団法人設立。現在複数の眼科クリニックで勤務。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動にも積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
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