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SVSスポットビジョンスクリーナー~乳幼児検査で大活躍

こんにちは、視能訓練士の平良です。

今回は乳幼児の弱視斜視早期発見に大活躍中のスポットビジョンスクリーナーSVSについてあらためてご紹介します。そもそもSVSとは?そもそも早期発見とは?私たちプロジェクトの使用感などについてお話ししたいと思います。

早期発見と3歳児健診

子どもの眼は生まれてすぐ見えているわけではなく、時間をかけ成長と共に発達し、両眼視機能の獲得までたどり着きます。これを阻害するものとして弱視や斜視があります。※詳細はこちらをご覧ください

精密な両眼視機能の獲得は6歳~8歳頃までに獲得されますので、弱視や斜視があれば1年でも1ヶ月でも早く発見し、眼科での治療に取り組んでいただきたいわけです。治療は数年かけておこなわれますので、早期発見は本当に大事です。

師匠である辰巳貞子先生(小児眼科医)は、両眼視機能を獲得した状態で小学校に入学させてあげたいとおっしゃっています。お子様の豊かな発達や成長に大切な学習において、両眼視機能も大切な要素の一つ。わたしも眼科で検査や訓練を担当しながら、学校であらゆることを吸収し成長して欲しいなと日々願っています。

※早期発見の重要性については対談記事こちらもご参照ください

出生後のお子様に対する健康診査はわが国において様々あり、〇ヵ月健診、〇歳児健診、就学前健診などがあります。どれも大切ななか、眼の検査では3歳児健診が特に重視されています。

3歳という年齢は、器械を用いた他覚的検査(本人から回答が不要なもの)だけでなく自覚的検査(本人の協力のもとその回答が検査結果に反映)も出来るようになってくる時期です。表情や仕草など反応がアクティブなため、眼科検査員も本人の「見えにくさ」が分かりやすくなってくる頃なので、発見後の眼科検査がスムーズになってくる期待があるからです。

ただ注意点として、3歳まで待って良いわけではありません。本当はもっと早く(1歳や2歳)発見治療したかったという事例もたくさんあります。

保護者さんとお話ししていて

「1歳半健診後に眼科受診したけど、分かるようになる時期まで待ちましょう、と眼科に言われた」

という方がいますが。。。

本当は治療着手が早ければ早い方が良のも事実なんです。これは眼科現場のわたしの実感です。

スポットビジョンスクリーナー(SVS)って??

SVSは、米国ウェルチ・アレン社の眼の検査機器です。

https://share.google/R7K80NBgRdcdpTyFs

専門用語で申し訳ありませんが、各眼の屈折値/瞳孔径/PD瞳孔間距離などのほか、眼位の異常も検出できます。

(注)屈折値=遠視近視乱視など屈折異常の度合い

生後6カ月の乳児(首が座る頃)でも測定できるのが最大の特徴です。

また、子どもに限らず、あらゆる年代や身体的な障害の有無に関わらず測定できます。

もう一つの特徴は、とても測定しやすいという点です。

まず測定される側、特に子どもにとって”いかにも検査される・身構える”という雰囲気にならず、何か写真を撮りましょうねという和やかなイメージで測定できます。お子様に警戒され泣かれて検査にならない…というケースが少なく、保護者様と一緒に測定されても良いことからとてもスムーズです。

加えて検査側もとても操作しやすく、健診現場の保健師さんなどにも扱いやすく測定しやすいことがたいへん喜ばれています。異常が疑われる項目にはアラーム(警告表示)が出るため、健診のようなスクリーニング検査に大きな威力を発揮しています。

もちろん眼科でも活用されています。精密な検査を期す眼科においては複数回測定して慎重に数値を求めたりと、わたしもふだんから活用させていただいています。

きらきらカメラだよ♪

みるみるプロジェクトの園内スクリーニング検査でもSVSは大活躍。1mほどの距離で半暗室状態で撮影します。

声かけに工夫も
写真では明るく見えますが実際は半暗室状態

どんな声かけをするの?とよく聞かれますが、園児の年齢に応じて声かけにしています。

3歳児クラス年少さんは複雑な言葉よりも

ココっ!キラキラっ!

出来るだけ単語と擬音語で。

4歳児クラス年中さんは理解度も上がっているので

きらきらカメラだよ♪かっこよく撮れるかな?

5歳児クラス年長さんになるともう来年小学生…

宇宙のカメラだよ♪お星さまのカメラだよ?1回だけ見えるよ♪

といった具合です。

余談ですが「写真撮ろうね!」と誘導するので、こんなポーズをとる子がとても多いです。今の子どもたちは写真を撮り慣れてる様子!微笑ましいですね。

こんなときは一度撮影したフリをして「ありがとう!じゃあ今度は手はお膝~」と声かけします。

のべ2,000名を超える園児検査のなかで撮影出来なかった園児は3名のみ。(※2025年3月集計時点)そのうち1名は泣きじゃくって撮影出来なかったためですが、2名はいくら固視してくれていてもどうしても撮影出来ない事例でした。

このSVSはきちんと条件が整っているのに撮影出来ないことそのものが「陽性」という考え方です。

なおこの2名はその後の眼科受診で、目の疾患が発見されました。

【重要!】発見後の眼科受診

SVSはこのようにたいへん優れた機器ですが、もちろん万能ではありません。

信頼性はとても高いものの、出された数値は絶対的ではありません(そもそも絶対的な機器はない)し、異常検出されてもその後の検査で異常なしだった(偽陽性)ということもあります。

3歳児健診を例にとると、健診で異常が発見されたら、

素早く眼科受診

眼科での精密な検査や診断がとても重要!というわけです。

せっかく3歳児健診で”弱視疑い”が発見されても、5歳になってからようやく受診した、なんてケースは実際に少なからず発生しています。

こうしたとき保護者様に聞くと

『急がなくて良いと思った、小学校に上がるからそろそろかなと…』

と思ったそうです。

発見から眼科受診までのタイムラグはとても痛い…すぐに眼科受診して治療・訓練に取り組んでいただきたい大切な時間なんです。

自治体が取り組む素晴らしさ

3歳児健診には集団健診(自治体が行う)と個別健診(地域の小児科などが自治体から受託)とがあります。ちなみに福岡市は集団健診、わたしの故郷北九州市は個別健診です。北九州市は辰巳貞子先生の地域における啓発活動/倉重こどもクリニック倉重弘先生など小児科医の先生方の永年のお取り組み等により、たいへん多くの小児科クリニックがSVSを保有しています。

どちらにせよ、自治体/小児科/園内スクリーニングなどSVSチェックの機会はより多くあるべきと考えます。

全国の市町村自治体は1,718。業者の方によるとこのSVSを保有している自治体は85%以上に進んでいるようです。(※2025年5月時点)

いち早く導入し活用中の自治体では弱視斜視の発見数が大きく前進しているとの報告もあり、SVS活用の早期発見効果は明らかです。


平良美津子PROFILE

視能訓練士/みるみるプロジェクト参与

北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、医療法人大里眼科クリニックにて辰巳貞子先生のもと小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て(一社)みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。複数の眼科クリニックで勤務しつつ後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に取り組む。

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