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間違いなく、わたし達の愛娘‐保護者エピソード

全国でたくさんの患児保護者が弱視斜視の治療/訓練に取り組んでいます。

それぞれがどんな想いを胸に、どんな経験をされているのでしょうか。

これから治療に取り組もうとされている保護者のために、みるみるプロジェクトに投稿してくださった経験談/メッセージをご紹介します。

間違いなく、わたし達の愛娘

中沢 恵美 さん(岩手

「美結ちゃんは白内障です。」 頭の中が真っ白になった。

「まだ赤ちゃんなのに?一生目が見えないの?この子の将来はどうなってしまうの?」

とそのあと次々と答えの見えない質問が押し寄せた。

これを書きながら、当時を振り返ると涙が出てくる。

生後3〜4ヶ月頃、スマホで写真を撮るとなんだか目が寄るような…でも、普段は感じないし、目が寄らない写真も多い…。

夫や当時、毎日手伝いに来てくれていた母にも話したが、「(目が)寄ってるようには見えないよ。大丈夫じゃない?」と。

市の健診でも小児科医からは「そのようには見えないですけどね。もし、お母さんがご不安なら安心を買うつもりで眼科に行ってみてもいいかもね」と言われ、わたしはその通り安心を買うつもりで行ったのに、あれやこれやとトントン拍子で、医大に紹介状を書いてもらうということになってしまった。 安心を買いに来たつもりなのに…とんでもないことになってしまった。

しかし、誰もが(目が寄ってるなんてことは)ないと、しかも小児科医までもが子どもを診て言う中で、母の勘なのか、ごく僅かな変化を見過ごさないでいたから発見できたのだ。これには今でも「あの時、えみたんが気づいて眼科に行ってくれなかったら、手遅れだったかもしれない」と夫から感謝されている。

紹介状を書いていただいてから、医大の県内では1人しかいない小児眼科の今の主治医に診ていただくまで、当初2ヶ月待ちと言われたが、近々に医大に行った方が良いと言われて紹介状をもらったのに2ヶ月も待てない、どうにかならないかと懇願した結果、2週間後に医大で診てもらえることになった。すでに生後5ヶ月になっていた。

美結の先天白内障は、目視では全く分からず、眼科医も目視では見落とすレベルと言われ、最短で約2週間後に手術をしていただけた。

美結の場合、パパママ両家遺伝的要素もないし、妊娠中に風疹にもかかっていない。重症妊娠悪阻からの胎児発育不全で入院、低出生体重児で生まれたが染色体異常は言われていない。しかし、先天白内障で生まれてきた美結。

でも、先天白内障と既に診断がついてしまった以上、私たち夫婦の中で手術するという選択肢一択だった。 当時はコロナ禍全盛期で、厳戒態勢の院内。母のみ付き添い入院が許され、入院時も最低限の面会で、かなり心細かった。

手術後、メガネが来るまでの1ヶ月が1番大変だった。毎日4回の種類の異なる点眼。

そしてメガネの代わりに、レンズを顔にメンディングテープで貼る。生後6ヶ月の赤ちゃんはもう手も発達済だし、やはりテープが痒いのだろう。何度も何度もテープを剥がす。貼っては剥がされるの繰り返しで、こちらもイライラするし、これをちゃんとやらないとこの子の一生の目に影響が出ると躍起になって、今でこそ赤ちゃんに怒ってもわかるわけがないのに、テープを剥がされるイライラも加算され怒っていた。でも、今思い出しても思うのは、イライラもあるにはあるが、やはりちゃんとしないと一生のことだから、という思いは強かった故の無謀な赤ちゃんへの怒りだったように思う。

せっかくのハーフバースデーの写真は、顔にメンディングテープの写真。かわいそうに見えないようにパパママは精いっぱいかわいく撮った。

手術から1ヶ月、待ちに待ったメガネが出来上がってきた。

出来上がってから初めての週末。美結に初めての色を見せたくて、紅葉を観にドライブに。正直どの程度見えているのかわからないが、紅葉を見に行った日に初めて「あった」と喋る。言葉どおりの意味なのかわらないけど、確かに「あった」と言い出して。コロナ禍の中、病院のハシゴや手術もあり、通院や健診以外のお出かけはほぼ初めてだったこの日。

この子にもっといろいろな色やキレイなものを見せてあげたいと思った初めての家族3人でのお出かけだった。

手術から2年が経つ。美結の場合、原因不明の先天白内障のため、手術した後に退院を伸ばし、先学として合併症として考えられる染色体異常を含め合併症がないか検査もしていただいたが、今のところ先天白内障以外は見つかっていない。

もちろん、今は見つかっていないだけでこれからの成長過程で見つかることもないわけではないし、これはタイムマシーンで18年後に行ってみないとわからないことだが、今は、先天白内障のみ。定期的に、主治医にしっかり診ていただいて順調だとお墨付きもいただいている。

美結は、親バカかもしれないが音楽が好きなのかリズム感もあるように思う。あとは、赤ちゃんの頃から、「これが赤ちゃんの力?」と思うくらい力が強かった。主治医からも言われたほど。

目が見えない分、必死で音を聞き、研ぎ澄まし、赤ちゃんにしては強い力もつけるべくしてつけたのかな、そうやって目が見えない分、自分を守ろうとしたのかもしれないと思っている。

保育園に迎えに行くと「なんでミユちゃんは赤ちゃんなのにメガネしてるの?」と何度か言われたことはあるが、わりとこども世界でも、メガネが受け入れられている気がする。今は小学校入学前の子どもでメガネをかけてる子も増えたように感じるし、もちろん、メガネをかけてることで今後嫌なこともあるかもしれないが、わたしが子どもの頃に比べたら、メガネを1人の個性や特徴として捉えている雰囲気が広がってるような気がする。

今でも、少しわたしより年長の知り合いの方にお会いすると「こんなまだ小さくてメガネ?かわいそうね」なんて言われることがある。わたしは、「かわいそうか…かわいそうではないぞ」と少し反発心を持つが、たぶんまあわたしも美結を持つまではそちら側の人間だったわけで。

もちろん、美結がもう少しこの社会がわかるようになってきたら、自分がメガネをかけていることに、ヒトとはちょっと違うことに気づいて傷つくことがあるかもしれないと思うと、誰のせいでもないが申し訳ない気持ちはあるけれど、赤ちゃんや子どものメガネに理解ある、そしてその家族にも理解や背景を想像できる社会がもっと広がってもらえるとうれしいのだ。

また、育児休業中だったわたしは初めて先天白内障だと言われたとき、職場復帰できるのか不安でたまらなかった。金銭的なことはもちろんであるが、働かない選択肢はなかったため、これから治療にお金がかかるのに、先天白内障を受け入れてくれる保育園が見つからなければ働けない。

幸い、美結をお願いしている保育園では、先天白内障の子どもは美結1人だけだし、点眼やメガネがあることで先生方にはお手間を取らせていることも多いしそれを受け入れてくださって、本当に感謝している。

医療的ケア児支援法が昨年施行された。世の中には、働きたくても子どものケアやさまざまな理由で働けないママさんがたくさんいる。美結だって、できればこのまま順調に進んで行ってほしいが、視力によっては障害者になり得る可能性だってある。

どうか、ママだけじゃなく、全てのさまざまな事情があって働きたくても働けない人が働ける社会になりますようにと心から思う。

美結が住む県は、小児眼科医が1人しかいない。そのため、当初はまず診ていただくのに2ヶ月待ちとも言われたし、定期的に受診する際も美結と同じようにメガネをかけた子どもとそのご家族も待合室にはたくさんいる。

医大がある県庁所在地に住んでいて美結はまずラッキーだなと心から思う。わたしたちの県は、県内に移動するだけで、四国各県を車で移動するのと同じくらいかかるのだ。今は2〜3か月に一度の受診だが、医大がある県庁所在地以外に住んでいたら、朝5時か6時には家を出る必要があるし、医大は近隣県の県境も網羅しているらしく(詳細は詳しくないのでこのくらいにするが)、そういった県内な中でも地方に住まわれてる方に比べたら、まず、病院までの距離的なことでいえばラッキーかなとありがたく思う。

初めて主治医に診ていただいた時、少し聞いたのはアメリカは日本に比べて、看護師に役割も多く移譲していて、出生した赤ちゃんを確認する際に目の異常もけっこう細かく診たりするらしいと聞いた。日本では、医師の役割がまだまだ看護師に比べたら多いので、目の異常を詳細に確認することは不可能らしい。

赤ちゃんの聴力検査のように、目の検査も一般事項として行われるようになれば、目視では確認できない美結みたいなパターンもある程度早い段階で見つけることもできるのではないだろうか。医療人ではないから、無責任なことは言えないが、先天白内障を早期発見できるような仕組みができることが夢である。

わたしたちの住む県に、一体どのくらいの美結のような先天白内障の子どもがいるのかわからない。特に、美結の場合と同じく、他の合併症が今のところ見つかっていない原因不明の先天白内障の子がどのくらいいるのか、情報共有、共感し合える家族と交流がしたいと考えている。

インスタグラムで、他県の方との交流はあり、同じ境遇や気持ちを理解し合えるありがたい存在だ。ただ、同じ県内では、全く交流がなく、市の子育て支援課などでも把握できていないのが現状である。待合室の家族と時には話すこともできるとは思うが、どんな気持ちで待合室にいるか押しはかりながらになるし、主治医では患者同士を引き合わせたりはできないそうなので、同一県内でわたしたちと同じような気持ちで情報交換したいと思っている家族と交流の場がほしいのが現状だ。

最後に、うちの美結は本当にかわいい。

メガネっ子の美結が美結であり、美結じゃない赤ちゃんを望んでいない。

間違いなく、わたし達の愛娘である。

今後、メガネや病気のせいで、美結がときには悲しい思いをすることがあるかもしれないけれど、精一杯パパとママは寄り添っていくよ。


みるみるプロジェクトでは弱視斜視治療に取り組んでいるor取り組まれたご経験のある保護者さまからの投稿をお待ちしております。

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