
こんにちは、視能訓練士の平良です。
今回はほとんどのお子さんと保護者向けのお話。
「小学校入学に備える」
という考え方についてお伝えします。
“学習”が始まる
お子さんを検査/訓練する眼科の考え方として
「小学校入学に備える」があります。
これは私の師 辰巳貞子先生(小児眼科医)に
教わった重要スタンス。
眼科外来でも園内視力検査でも
常に意識するテーマです。
園児のうちにもれなく弱視を発見し、
可能な限り6歳頃までに治療を終えたい
理由の一つもこれです。
また近年,就学前に既に近視が始まっているケースが増えていると感じており、このチェックとしても園内視力検査を重視しています。
わかりやすくいうと

ベストな見え方で小学校入学させてあげたい
というスタンスです。
小学校入学をなぜ重要視するかというと
人生ではじめて本格的な「学習が始まる」
点にあります。
子どもたちは豊かな人間形成のために
長く学んでいきます。
もちろん園児世代から絵本を読んだり文字を書いたりしますし、中学~高校~その後の高等教育までとても大切な成長期間ですが…
小学校は本格的な学習の入口として最重要と考えています。
“学習”の基本は読み書きです。
またお友だちや先生など人々の表情を読み取る,
四季折々の風景を見る,スポーツをする。
目で見えるもの全てが学習といって良いでしょう。
文字が詰まった教科書や文章を読むうえでは
両目のチームワークを上手に使う【両眼視機能】
も大切。



つまり、同じ時間を過ごすのであれば、出来るかぎり本人のベストな見えかたで学ばせてあげたいのです。
小学校でベストな視環境とは


370(サンナナマル)方式をご存知でしょうか。
視力1.0、0.9~0.7、0.6~0.3、0.3未満の4つの区分で児童生徒の見え方を判定する学校健診の方法で、A/B/C/Dで判定されます。
小中学校では学校保健安全法に基づき毎学年定期(4月から6月末まで)に行われますので、ご存知の方も多いと思います。
大人の普通運転免許合格ラインが視力0.7であることも影響しているのでしょうか?
保護者のなかには



「B(視力0.7以上)あれば良いんじゃない?」
というイメージの方も多いようです。
しかし多くの眼科医はA判定以外(=B以下)は眼科受診して、適切な視力矯正(メガネなど)をして欲しい と考えています。
裸眼視力1.0未満の割合と視力矯正
文部科学省の学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0未満(遠見視力)の割合はこの数十年ずっと増加傾向であり、小学校では35%を超えます。(令和4年度調査)この多くが近視であろうと推測されています。


それではこの裸眼視力1.0未満の児童全員がメガネその他で視力矯正しているかというと…そうではないのです。
眼科には学校健診の結果がB以下だったので…と多くの児童が来院しますが、保護者にヒアリングしますと



何年間もB以下だったけどまだ良いかなと思ってた



本人は黒板見えているって言うし問題ないと思う
というコメントをいただくことも多いです。
小学校では、近視が始まってもメガネなどで矯正していない児童が多く、「席を前の方にしてください」という保護者要望が多すぎ、席希望は受け付けないという学校も珍しくないそうです。
弱視治療も近視の矯正も
弱視や斜視が見つかったら、早期発見早期治療。
視力が1.0確保できて、両目のチームワークが上手に使える状態で入学を。
近視が見つかったら、目を細めたり険しい表情になってまで裸眼で過ごすよりも、メガネできちんと矯正して登校して欲しい。


色々なご事情はあると思いますが、皆さんと共有したい理想です。
いま、私たちは人々の協力を得て保育園/幼稚園の活動に力を入れています。どの園でも必ずこのお話をしています。
平良美津子PROFILE


北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務。医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)にて師と仰ぐ辰巳貞子先生のもと小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、有志らと一般社団法人設立。現在複数の眼科クリニックで勤務。検査等で関わった患児のべ7万5千人以上。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動にも積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
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